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さまざまな技術の学習

天井走行クレーンの運転

クレーン
シミュレータA
クレーン
シミュレータB
クレーン
シミュレータC

開発年

1965年

開発の経緯とねらい

 本システムは、JADEC設立準備室において、当時の通産省から研究助成を受け、日本鉄鋼連盟のバックアップを受けて開発したものである。草創期の行動分析手法から生まれた学習(訓練)システムの第1号で、天井走行クレーンの運転技術を3つの要素にわけ、それぞれの要素を3つのシミュレータで段階的に育てるようにしたものである。

 シミュレータA 第1段階 意識ゼロのハンドル操作
 シミュレータB 第2段階 最短の軌跡をつくる左右複合操作
 シミュレータC 第3段階 積荷の振れを吸収する振れ止め操作

 運転席の下に大きな鉄材を吊り下げ、移動して運ぶ天井走行クレーンは、製鉄所にはなくてはならないものである。しかし、その運転技術の訓練は、それまでは他の多くの技術と同様、座学と実習という形で行われていたが、高い位置から荷の大きさを目測し、振れないよう移動・停止させるというその運転技術は大変難しく、運転中の事故が絶えなかった。一人前になるには3年かかるというのが一般的認識だった。

クレーン
天井走行クレーン
クレーン
運転席のクレーンマン

 当時、飛行機のパイロットを養成する大型訓練シミュレータのニュースが人々の関心を集めるなど、訓練手法に新しい風が吹き始めていた。JADECも準備段階にありながらも、現場のニーズを受けて、手探りで研究を進めた。
 研究スタッフは、新日鉄八幡工場(当時は八幡製鉄)の30年のベテランクレーンマンである高崎さんの現場作業を残さず映像に記録し、それを繰り返し見て分析を重ねた。製鉄工場の広大な作業現場で轟音を立てて走るクレーンの動き、高崎さんの目の動き、手の動きなどをカメラで追い、宿所では深夜までそれを整理、翌日は高崎さんに質問しながら分析するという日々を送った。
 そうした分析作業から生まれたのが、この三つの奇妙な訓練機械。パイロット訓練の実物そのままのターミナル・シミュレータなどとは全く発想の異なる素朴な姿ながら、訓練には威力を発揮した。訓練時間が半減した上に、現場での事故が大幅に減少。このことは、鉄鋼連盟を通じて広く製鉄各社に伝えられ、各社ともシミュレータを複製し、同様の訓練を実施した。
 NHKのドキュメント番組「明日をひらく」にもとりあげられ、『熟練工誕生』として全国に放映された。

[当時開発に参加した八幡製鉄の花田哲人氏の感想] 

迫力を実感する
 私は、第1回の調査から現地の窓口として、調査団のお世話のかたわら、研究の足取りを学ぶ機会に恵まれたことを今も感謝している。(中略)起重機のシミュレータ3種の訓練を終えた富山の盛野さん*が、実物の起重機に初めて乗り込んだとたん、「動かしてみましょうか」といわれたときに、シミュレータの効果の確かさを感じた。と同時に、「転移**」の意味が実感としてわかった気がしたのである。         (能力開発工学センター創立10周年記念誌(1978年)より)

 * 富山県理科教育センター所員。プログラム教育研究所に内地留学中、研究に参加していた。
 ** 心理学で使う言葉。ラテン語を学んでおくとイタリア語が早く学習できるように、似たものを学習したために別の学習がひとりでに行われることを言う。


全体カリキュラム


 天井走行クレーン運転の全体カリキュラムは、下図の通りである。
 学習内容は5つの領域に分け、どこからでも自由に学習できる独立したショップ方式として構成してある。
 各ショップには、それぞれプログラムされたテキスト,スライド,ムービー,各種教材が備えてあり、学習者が各自のペースで学習できるようになっている。
 シミュレータによるクレーン運転の訓練は、このうちの運転ショップの(1)(2)(3)の部分(赤字で示したところ)である。

★ I~VIの段階は学習の順序。同じ段階であれば、どれからでも学習してもよいようになっている。
★ 各ショップの学習は、(1)(2)(3)・・・の番号の順に内容を構成してある。

クレーン



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