神奈川県横須賀市 http://www.kanto-aw.co.jp/
自動車板金図面の読み取り能力を育てるための教材開発
1968年~1970年
<開発を担当した関東自動車工業技術部小川進也氏の報告*から抜粋>
作業に当たる中卒者には、社内で講義方式による教育を実施していた。しかし、使用する教科書(労働省職業訓練局監修)は機械製図中心のもので、自動車ボディーの製作には内容が不適。さらに、受講者のレベルがさまざまなため、試験成績には著しいバラツキがある。つまり社内教育の効果は芳しくなかった。
また、高卒者は、工業高校で製図教育を受けてきているが、これも機械製図が中心で、板金図面を読むには殆ど役に立たない。
一方、業界の競争が激しくなり、試作車開発期間の短縮,試作車品質の向上、が強く要求されるという背景があって、作業者の能力開発が叫ばれ、特に図面や現図を読む能力を育てることが急務となった。
そこで、試作工場において各種模型教材などを工夫し、40~48時間の教育(講義式)を実施した。(対象:組長、班長、係員系90名)しかし、結果は毎回20~30%が終了認定条件に満たないということ、更に全社的にみると教育が必要と思われる人数は約800名ということから、プログラム学習方式の導入を決定、能力開発工学センターに共同開発を依頼した。
*「板金図面を読むためのプログラムテキストの開発」JADEC紀要10号(1970)
能力開発工学センタースタッフが工場に出向き、関東自動車工業の担当者と共同して開発に当たった。
「自動車現図 初級」 9分冊(約1000ステップ) | ||
I. | 五面の表現と実体(部品)との関係をよみとる | 第1分冊 |
II. | 実体(部品)を五面図に表現する合理的方法を発見する | 第2,3分冊 |
III. | 投影面に対して、ある角度を持っている実体(部品)の合理的な表現方法を発見する | 第4,5,6分冊 |
IV. | 図面をよんで単位面を立体化し実体(部品)を図面の寸法どおり表現する | 第7,8,9分冊 |
各種形状(平面、曲面、波状面ほか)をシミュレートした部品多数
<前掲の関東自動車工業技術部小川進也氏の報告から>
○中卒訓練1年生15名に対して、トライアウトを実施(中卒者は訓練所で3年間教育する)
インストラクターは、疑問をもつ学習者のところへ 行って個別に指導している。 |
学習者は、テキストの指示に従って、 組み立て式ガラス箱や部品を使い、 ワークしながら学習を進めていく。 |
●具体的な力として読み取れたこと
●行動のしかたの変化
○教育訓練所で正式採用が決定
従来OJTで3年かかっている現図の読み取りは、3~6ヶ月程度に短縮できるという見通しが立った。その結果、1969年5月より教育訓練所での教育が開始され、近く社内説明会を開催して全社的に実施されることになっている。
<図面及び現図の不備発見>
プログラムテキストを開発する過程で、多くの図面や現図を検討した結果、作業のためには図面の書き方にいろいろな不備があることを発見。断面図不足,指示符号不足,矢視図・説明図不足など。設計側に指摘したところ、現状の不備を認めた。
<図面研究会の発足>
図面設計者と、図面を呼んで仕事をする立場の「ユーザー」が合同で図面の書き方についての研究会を持つ話がまとまった。