JADEC: Japan Ability Development Engineering Center

1992 情報社会における創造的能力の育成を考える

開催月日

1992年11月6日

開催場所

国立教育会館(東京都港区虎ノ門)

開催趣旨

 昨年に続き、今年もまた情報化社会に対応する能力開発の問題を考えたいと思います。
 情報化は、製造現場においても、経営管理,営業部門においても、仕事の仕方を大きく変えています。企業もさまざまな見地で体質改善を余儀なくされており、新たな展開を生み出す創造的行動力が求められています。
 創造的行動力というのは、主体的な姿勢が生み出すものです。当センターは開所以来一貫して主体的姿勢を育てる教育の研究,学習システムの開発に取り組んできましたが、それは変化に対応する体質を育てることに大きな成果を挙げています。製造プラントの自動化に対応する運転・保守マンの教育,ガス業界の大事業として行われつつある天然ガス転換事業を支える調整員の育成などはその一例です。
 今回は、特に情報社会に対応するための取り組みについて、特色ある事例を報告していただき、広く企業の情報化やそのための社員教育に努力されている皆様の参考に供したいと考えています。また、当センターにおいて、ここ数年研究開発に取り組んでいる「コンピュータ学習システム」についてもご紹介したいと思います。
 パネルディスカッションでは、そうした事例を材料として、情報社会における能力の開発の問題を、さまざまな角度から検討していただきたいと考えています。

プログラム

1.実践・研究報告

 新日鉄(株)広畑製鉄所
 (株)安川電機
 日本電気ソフトウェア(株)
 能力開発工学センター

2.オープンディスカッション

 「情報社会を創る主体的行動能力を育てるために、教育はいかに転換すべきか」

<パネラー> 報告者全員
<アドバイザー> 奥田健二 上智大学経済学部教授
<司  会> 安田 浩 能力開発工学センター常務理事

実践・研究報告の概要

(1)職場のコンピュータ化及び職種転換に対応する現場作業員のコンピュータ研修

<元新日鉄(株)広畑製鉄所能力開発センター 角田郁雄>

 情報化による仕事の変化に対応するための中高年齢者の研修。あるものは高度にコンピュータコントロールされた製造現場の運転保守、またあるものはFAシステムのプログラム作りという新たな仕事への転換など。いずれも研修によってコンピュータに対するアレルギーを取り除き、自信を持って仕事になじんでいる。その様子を報告する。

(2)新入社員に対するマイクロエレクトロニクス(ME)研修

<(株)安川電機人事部人事開発課 後藤泰男>

 電気・電子系専門以外のすべての新入社員に、同社として必須の電気の基礎知識からコンピュータの働く原理までを習得させることを目的とした研修。技術はもとより、グループで協力して問題を解決していく行動力を育てることをねらいとしている。難しい講義が一切なく、やさしく書かれたプログラムテキストをガイドにして、3~4人のグループで実験しながら理解していく様子を報告する。

(3)ソフトウェア技術者の基礎教育としてのリテラシー研修

<日本電気ソフトウェア(株)教育システム部 小荒井 順>

 コンピュータに対する知識にバラツキのある若いソフトウェア技術者が、本格的なシステム開発者に育つためには、ソフトウェアの背後にあるコンピュータの働く根本の原理を理解することが必要である。それによって、自信を持って仕事に取り組むことができると考える。「コンピュータ学習システム」での学習を組み込んだ、新しいソフトウェア技術者のコンピュータリテラシー研修、その様子を報告する。

(4)企業の情報システム化を支える「システム構築能力」の形成に関する研究 その2
   -中小企業(卸売業)における実践例を土台にして-

<能力開発工学センター 矢口哲郎 白尾彰浩>

 昨年、同じタイトルで発表した内容を発展させたものである。企業が情報システム化を実現していくには、管理者,システム開発担当者,運用者がそれぞれの立場に応じた「システム構築能力」を持たねばならない。それは、どのような内容で、どのように身につけていけるものか、中小企業(卸売業)に対する3年間の指導を踏まえて報告する。

オープンディスカッションのねらい

  • 仕事の場の情報化を進めるために、必要な行動力・姿勢とはいかなるものか
  • その行動力・姿勢をいかにして育てるか。
  • 教育は、この要請に応え得るか。どのように転換すべきか。