JADEC: Japan Ability Development Engineering Center

構案教材によるコンピュータ・リテラシー学習システム

開発年

1975~1985年

開発の経緯とねらい

 コンピュータ学習は、当センター設立当時からの研究テーマである。
 本学習システムは、テキストによる「コンピュータの基礎」を土台にして、構案教材*の活用というアイディアにより、コンピュータが仕事をする論理を真に自分のものとできることを目標にして、1985年に完成させたものである。以後、改善を重ねつつ、最終のシステムにいたっている。
 リテラシーというのは、レター(文字)を語源とした言葉で、読み書き能力から発展して教養という意味を持っている。難しいところはブラックボックスにして操作だけを教えるという実用主義に対抗して、「コンピュータが仕事をする論理がリテラシー(教養)となるように育てる」ということをねらいとした。
 具体的には、コンピュータが仕事をする論理(下記1~6のような項目)を学習の各段階の課題とし、構案教材による回路形成,システム実現を通じて身につけることを、本システムの目標とした。

1.電子が自動的に仕事をする根源であるパルスとは何なのか
2.電子によるデータの記憶とはどういうことか
3.電子による演算とはどういうものか
  演算ですべての仕事をするとはどういうことか
4.プログラムとはどういうものか。どのように作るのか。
5.ファイルとは何か。
6.人間の仕事をどのように分析し、どのようにコンピュータの仕事として構成するのか

  *構案教材の「構案」は、プロジェクト・メソッド<構案法>を意味するものである。

システムを構成する教材群

 コンピュータの働きの根源であるパルス発振と、電気による記憶の実現にはじまり、ロボットやシーケンスなど各種の制御システムや、名簿管理,販売管理などの事務処理システムにいたるまでを、自分でそのシステムを段階を踏んで構成していくことによって、コンピュータの仕事の論理を真に自分のものとしていくように設計してある。

≪テキスト≫
 テキストは、学習を進めるためのガイド。考える筋道、課題やヒントが載っている。
 覚えることや説明ではなく、行動のための手がかりをプログラムしたものである。

≪構案教材≫
  さまざまなシステムを、基本から段階的に作っていけるように、約160個のブロック教材と、コントロールの対象である、信号機,ロボット,荷物運びシステムなどが用意されている。
 学習者は、自分の構想にしたがってそれらを組み合わせて、仕事をするシステムを作っていく。

学習の進め方

 学習は、3~4人グループで、学習者が主体となって自主的に進める。
複雑なシステムを構成していく学習なので、グループのメンバーが助け合い協力し合って、構想しまた作業を分担しつつ回路構成をしていくことが、学習を効果的に進める。
 指導者が最も配慮するべきことは、早く正しい結果に到達させるということではなく、いかに学習者自身が自分の頭で考え行動して学習を進めていくようにするか、ということである。失敗させないようにすることではなく、学習者自身が失敗を客観的に分析し問題点を発見し修正していかれるように、援助することである。また、目標に向かって、いかに仲間が互いに助け合って学習を進めていくか、その行動のしかたを指導することである。
 (なお、この教材を使った学習については、下記に詳しく紹介してあります。合わせてご覧ください。)

      ●中学生のコンピュータ学習(映像 35分)
      ●意欲を高める学習(講演記録)
      ●中学生の探究的共同学習(雑誌論文)
      ●教師たちの感動を分析する(雑誌論文)



学習ユニットの構造

 本学習システムには、学習プログラムと教材からなるA~Nのユニットを準備してある。
目標,レディネスに応じて学習のユニットを選んで、内容を編成することができる。
学習時間は、30~60時間で、浅くも深くも学習できるように構成してある。