1972~77年
電気とは何か、どういう働きをするものかという問題に向かって、自分たちでさまざまな実験をしながら調べていくという学習である。
これは、文部科学省の科学研究費による特定研究「科学教育」の一部として行われた研究であり、出発は「教育におけるコンピュータ利用(CAI)」の研究であった。当時コンピュータの提示装置、反応装置は主として文字情報に限られていたため、学習が知識注入モードに陥り、コンピュータがテストマシンとなるのではないか、本来の学習を助けるものとはならず、人間不在の教育を助長することになりはしないか、という心配があった。そのため、科学的探究のような実験観察を主とする学習活動においては、コンピュータはいかなる機能を果たしうるかを明らかにしなければならない、という課題をおいたのである。
科学教育は、科学的行動力を育てなければならないというのが、JADECの基本的な考え方である。生活の中の行動として、自分の前にある現象を自分の目で科学的にとらえ、自分の頭で考えることができるように育てなければならないということである。
行動する神経回路は行動することによって作られる。探究行動を形成するには、探究する行動の場でなくてはならないということである。したがってまず、学習者が主体的に探究していくという行動形成モードの学習システムを構成し、そこにおける教師や教材、そして情報提示装置がいかなる役割を果たすべきものかを明らかにしていったのである。
小学校と中学校で扱っている電気に関するものすべてを取り上げている。大きく初級段階(小学校低学年以上)と中級段階(小学校高学年以上)の2段階に分けて設計してある。
初級段階はA~Fの6ショップについて行うようになっているが、ABCとDEFで段階を分けている。ABCが入り口で、乾電池の電気,静電気,磁石の三つに分け、それぞれ最も基本的なことについて調べる。3つのショップのどこからでも興味のあるところからスタートし、ABC全部が終了したら、つぎのDEFのいずれかに進む。DEFでは、それぞれのテーマについて、より深く探究を進める。
初級段階が終了したら、小学生であっても中級段階にも進めるようになっている。中級の3つのショップG,H,Iは電流(動く量)、電圧(押し出す力)、抵抗(じゃま)についての認識を確立することを目的としている。初級段階と同様どこからでも学習を進めて、終了したら、磁力を使って電気の量をはかるしくみ(電流)を作り出すショップJへ。その後は電流計,電圧計,抵抗計を活用して電気の定量的関係の探究に進む。
種類 | 初級(A~F) | 中級(G~J) |
プログラムステップ | 約1600ステップ | 約2000ステップ |
探究用実験材料(材料箱) | 24箱 | 20箱 |
観察用ム-ビー教材(短尺) | 31カセット | 16カセット |
その他の教材 | 電流計 電圧計 抵抗計 バンデグラフ 磁場測定用実験台 ティーチングマシン プロジェクター スクリーン |
材料箱の内容(中級の一部)
学習は3~4人グループで行う。
準備されているプログラム教材(テキストまたはスライド),ムービー教材,実験のためのさまざまな教材を使用して、自主的に進める。自分たちで考えて実験をやり、次の問題を発見するというように進める。
プログラム教材を提示するティーチングマシン (TM)を使って学習する小学生 |
プログラムテキストを使って 学習する中学生 |
教材は、学習者が自由に必要なものを取り出せるように整理して、準備しておく。
プログラムテキスト | 材料箱 その他の教材 |
TM用プログラム(上段) ワークブック(中段)ムービー(下段) |
教材を取り出す学習者 |
数グループに1人程度のインストラクター(教師)がついて探究活動を援助する。内容を教えるのではな
く、主体的な探究が進められるように、そして楽しく学習するための必要な援助をするのが役目である。